はじめに

昨今、世界情勢が急激に変化したこともあり、個人単位での人生の捉え方から、自分も自然界の一部だと位置付け、地球規模で人生を考える人が増えてきました。人類全体が大きな転機を迎えたことで、生命全体の危機を体験した膨大な負のエネルギーを反転させて、個々が、新たな方向に人生の舵をきろうとしています。

そして、その2極の動きさえ超えて、生命をもっと大きな視点から捉え、自分と自分を取り巻く環境を全体と調和させて、生きがいを持って豊かに生きようとする力を、人々の中に見ることができます。一つのものを追求することで、その中に全世界を見ることもあれば、世界の全体像を学ぶことで、一つのことや自分を理解することもあります。個から全を体験することと、全から個を体験することのどちらも重要です。しかし、現代は情報が溢れて個の世界が特化しており、部分的な情報は得やすくなりましたが、全体像は掴みにくい時代となりました。そのせいで、何をするにも迷いが多くなり、何事においても、決断や判断がしにくくなっているともいえます。

健康においても、肉体の問題ある部分だけを調節しようとする傾向があります。不調の原因は、人間全体を調べないと、本当はわからないはずです。しかし、その認識がないがために、部分や細部だけを考えてしまうと、どんどん自分の体や、自分自身がわからなくなってしまいます。以上のことを検討するだけでも、今、自然界の摂理や生命についての全体像を把握することが、この混乱した時代に人生を好転させる近道だと思えてなりません。

アーユルヴェーダの意味は、生命科学です。

よって、生命に関する知識の全体像を持っています。自分自身を、ホリスティックに捉える観点を持つことで、人生における苦しみを、大幅に減らすことができます。人は、肉体と精神と魂が密接に関係して全体を成しているといわれますが、それぞれの特徴と共に、全体の関係性について認識していなかったならば、いつのまにか、自身を守るはずの自分が、知らない間に最強の敵になってしまっていることがあるんです。

例えば以下が、そのような状態です。

折りたたみ可能なコンテンツ

1. モンキーマインド

常に彷徨い、固定しないマインドの特徴で、雑念が思考を占領している状態。マインドは一つしかないので、素早く動き、彷徨いながら、あらゆる危険を察知して身を守ります。しかし、そのせいで意識が散漫になり、雑念で心身の疲労を呼びます。

2. 感覚器官の刺激

感覚器官は、常に刺激された情報を脳に送って安全を確保するため、大変敏感にできています。しかし、その特徴ゆえに快・不快が生まれ、感覚器官の異常な刺激は、感情を左右します。

3. 暴れる感情

感情があるから、目的をもった行動ができます。また、ネガティブな感情は問題を知らせて、自分を守ります。しかし感覚器官が受ける刺激により、様々な感情が動き、膨大な情報がマインドに刻まれます。

4. メンテナンスが必要な肉体

肉体があるから、私たちはこの世に生きていられます。しかし肉体は、食事・睡眠・運動など、常に大量にメンテナンスをしなければならない面倒な性質を持ちます。精神や感情が暴走すると、心身相関の様々な症状が現れ、それに振り回されます。

5. 変化を嫌う怠け者の脳

脳は生命維持が効率的に働くように、指令を出すパターンが埋め込まれています。ですから、自分を守るために、脳の機能は常に省エネを選択しています。しかし、そのせいで脳は変化を嫌い、怠け者になっています。訓練しない限り、そちらに引っ張られ、肉体やマインドを健全に鍛えることが難しくなります。

以上、おおまかですが、それぞれ特徴があり、全体が関係しています。

感覚器官の刺激によって、強いネガティブな感情が多ければ、それは大量にマインド(潜在意識)に蓄積され、記憶による繰り返しで、さらに一定のパターンとなってしまいます。健在意識で、どんなに肯定的な考えをもっていても、その何百倍もの量の否定的な情報がマインドに蓄積されてしまうと、量の多い方が、自分の人生において実現されてしまいます。自分の望みが叶いづらく、まるで人生を邪魔するような出来事が、繰り返し作動している理由が、ここにあります。そして、肉体に負荷がかかり、脳は新しいことを嫌うので、同じパターンが永遠に繰り返されるということが起こります。そして、そのパターンが魂に付着していくといわれます。自分を守るために作られた仕組みを制御する訓練においては、大量にやるべきことがあります。ですからアーユルヴェーダでは、努力ではなく習慣化することで、自然にできるように訓練していくのです。

でもそれは、何のために?

夢を叶えるため。
楽に生きるため。
幸せになるため。
成功するため。
自分自身を知るため。
生きがいある人生を送るため。
生まれきた理由を知るため…そのすべてだと思います。

それは、歴史が証明しています。人類史の中の、一番の成功例を探すだけ。そのソースを辿れば、よいのです。そのソースが、アーユルヴェーダです。アーユルヴェーダは、人類史 5 千年以上で必要とされてきた、“ 生き方の辞書 ”。限られた修行者向けでなく、万人向け。先人・聖者が、すべての人類のために残した、安全で最高品質の、“ 生命のトリセツ ” です。必要だからこそ、5 千年もの間、消えなかった教え。時代の移り変わりにも耐えぬいた知識。歴史的に偉大な人物によりアップデートされ続けてきた、最古で最新の情報。このようなものは、他に類を見ません。

アーユルヴェーダの叡智に習い、“ 本質 ” や “ 本当に大切なこと ” を自分の中に落とし込むことができれば、些細なことで振り回されがちな目の前の現実、世の中をどう生き抜くかのための知恵が、自ずと内から生じてきます。私は、すべての人がアーユルヴェーダにふれてくれて、人生、健康、幸福、生きがいなどについての全体像を、先人の叡智から、さっさと受け取ってくれたらよいのに…と、常々思うのです。すべての人がアーユルヴェーダにふれてくれたら、自分の生きる道における迷いや苦しみや悩みが断然減り、望みが叶いやすくなるとも思っています。長生きしながら、自分のやりたかったことすべてをこの人生で体験できる―今は、そんな時代に突入しています。

時代が後押ししてくれている今こそ、自分が地球に生まれてきた理由をはっきり思い出せて、楽しい最高の体験が意識的に味わえる時だと、感じています。そのために大切なのは、「時間」です。この地球は、時間に縛られています。私たちは、そこに生まれてきてしまいました。その「時間」を超越するために、知識の光明を得ることが最初の一歩となるでしょう。やるべきことは、いつも目の前にあります。しかし、そんな目先のことに振り回されず、長い長い人生の見通しをつけるため、長期的な視野をもち、全体像を見る視座で、自分自身の位置を確認することが重要です。そのためには、まず肉体を強く。次に精神を。そして、魂の世界まで―まさにセルフメディケーションです。結局、自分のことは自分しかケアできません。日本人は古来より、仏教などを通じてすでに、アーユルヴェーダの健康法を生活に根付かせています。そう気づくと、アーユルヴェーダの様々な教えがどんどん腑に落ち、勉強するというよりも、“ やっと謎解きができた ” という感じが得られるはずです。すると、“ もっと知りたく ” なり、知った喜びから、またグングン知識が入り、やがて視座が勝手に変わります。さらにいえば、“ 人類の生き方の辞書 ” という点では、アーユルヴェーダでなくても、まったくよいとも思っています。しかし今のところ私の中で、それをかなえてくれるものは、他にはないんです。

自分の人生の主役になるために、アーユルヴェーダをぜひ活用してください。

澁谷るみ子